群青の海へ〜日本の旅〜
バンクーバーは本格的な雨の季節に突入しようとしている。
そんな時は、、本を読むに限る。
今日のタイトルは瀬戸内出身の画家、平山郁夫の自伝風エッセイから拝借している。
日本で好きな旅先は、「しまなみ海道」だ。本州と四国の間の瀬戸内海に浮かぶいくつもに連なった島々を総称してそう呼ぶ。
その数400以上にもなるという。
内、西瀬戸自動車道が通る沿線の地区に4.5人々が暮らしている島があり、それに魅了されもう何度か訪れている。
安宿や民宿に泊まり、昼間はサビついた昭和の自転車を借りてそこらへんを散策して回り、夕方には宿に帰って地元の新鮮な魚介料理をたらふく食べて温泉に入りのんびりする、という旅だ。
たくさんのお金は要らない。
ただそこにある空気や景色、レモンの香り、人々との交流や作り出される料理を楽しむ。
それらは美しく、懐かしい安堵感を感じさせてくれる。
「平山郁夫美術館」は島々の中の一つ、生口島というところにある。
平山画伯の出身地として知られている島である。
初めて訪れたのは初夏の雨の日だった。ガラス張りのロビーから見る外の景色が印象的だった。滴り落ちる雨の雫と明るい色の紫陽花がまるで一つの美術作品のようだった。
旅するように絵を描いた平山画伯の作品に一つ一つに心を打たれたのを覚えている。
東京、広島、山口、山梨、京都、そして瀬戸内。
この世に存在しない、深い群青を生涯をかけて表した絵画たち。
広島での被曝から仏教画とシルクロードの旅を通して人生の哲学を説いたこの本は、読めば読むほど味が出る。自分と時代も職業も旅した場所もまったく違う作者の価値観、人生観に共感することができる不思議な感覚。
雨のバンクーバー。
バスは酔うのでオススメしないが、空いた時間に活字と向き合ってみるのもまたよし、だ。
本はその時々の自分の置かれた立場やタイミングによって前回読んだ時と感じ方が違ったりするので面白い。
瀬戸内海とイングリッシュベイはつながっている・・・